特集01

自宅介護の限界

自宅で介護する覚悟

超高齢社会に向けて、誰もが避けて通ることができなくなった介護の問題。介護が必要な家族に対しどう接するか、重要な課題に直面します。

介護の選択肢として、

①家族に介護をしてもらって自宅で暮らす
②デイサービスや在宅介護サービスを活用して自宅で暮らす
③老人ホーム・介護施設へ入居する

主に上記の3つのパターンがあげられます。

自宅で介護する覚悟

やはり住み慣れた我が家や環境が変わることを嫌がり、自宅での介護を希望される方は多いと思います。 また、そのご家族も施設へ預けるのは、薄情なのではないか、などと負い目を感じたりして、自宅で介護をすることを選択する方は多いのではないでしょうか。

自宅での介護にはさまざまな困難や問題が伴い、精神的にも肉体的にもかなりの負担があります。 相当な覚悟を持って臨まないと、長続きさせることは難しいと言えます。

暴力を振るったことがある人がいるという事実

毎日新聞が行ったアンケートで「介護で精神的・肉体的に限界を感じたことがありますか?」という質問に対し、「ある」と回答した人の割合が約70%と高い数字になり、在宅介護の難しさが数字に顕著に表れました。 またショッキングなデータとして「被介護者を殺そうと思ったり、被介護者と一緒に心中をしようと考えたりしたことはありますか?」との問いに対しては、約20%の人が「ある」と回答。 「実際に被介護者に暴力を振るったことがある」との問いに対して、約20%の人が「ある」と回答しているのです。 確かに介護疲れを苦に殺人や心中などの悲しいニュースを耳にすることが近年増えていることからも、アンケートの数字は他人事ではないと重く受け止める必要があります。

自宅介護のイライラが被介護者本人に向けられてしまう

では実際に在宅介護をしている家族は、どのような負担を感じているのでしょうか。経験者の話を総合すると主に「精神的」「時間的」「肉体的」の3つの負担を感じていることがわかりました。

精神的な負担とは、介護のイライラが被介護者本人に向けられてしまうこと。 被介護者が認知症の場合、食事を済ませているのに「ご飯はまだか?」と何度も繰り返し言うなど。それが毎日繰り返される中でイライラしてしまい精神的に追い詰められてしまうことがあるそうです。 この介護生活がいつまで続くか分からない状況も介護する側の負担に拍車をかけていると考えられます。 実際に「この状況がいつまでも続くのかと思うと気が滅入る」という意見もありました。

時間的な負担とは、文字通り「自分の時間が持てない」ことによるストレス。 自宅で介護をするということで仕事を辞める人もいると思います。 「家」という箱の中で介護に追われ、自分の時間がない。これは、想像以上のストレスと言っていいでしょう。 実際に「唯一自分の時間が持てるのは、寝る時だけ」といった切実な声も聞かれました。

肉体的な負担とは、いわゆる介護疲れのこと。 とくに女性で多いのは「自分より体重の重い夫を抱きかかえたりしていたら、腰が悪くなってしまった」という声。 介護は、思った以上に体力を使います。 ほっと息つく時間が持てない分、精神的な疲れも重なり余計に身体に疲れを感じることがあるようです。

はじめは、誰しも大切な家族を自分で最期まで面倒みたいと思い、自宅での介護を決断していると思います。 しかし、想像を絶する在宅介護。 介護疲れの果てに、精神的にも肉体的にも限界がきて、良からぬことを考えてしまう人、実際に行動に移してしまった人は、少なくないのが現状です。 このような悲しい現状は、絶対になくさなければいけません。

悲劇を繰り返さないためにできること

では、もう二度と同じような悲劇を起こさないことは可能なのでしょうか?

私たちは「可能」だと考えます。 在宅介護以外にも介護をする選択肢は多くあり、それが無責任とか薄情とかではないということ。 介護をする側が無理をせず、心に余裕を持って被介護者と接することが被介護者のため、自分のためになります。 そのためにも、頼れるものには頼って、使えるサービスは上手に使うことが大切です。 行政の窓口やソーシャルワーカー、介護のプロフェッショナル(ケアマネージャーや施設職員など)に相談することをおすすめします。

私たち施設の人間は入居の相談はもちろん、介護のことで不安点や疑問点など些細なことからお気軽に相談してほしいと考えています。 1人で抱えて頑張りすぎないこと。これが、とても重要だと思います。 私たちのような介護に携わる人間に頼りながら、少し楽をすることはとても大切なことです。 実際に在宅介護に限界を感じ、施設への入居に切り替えた方で、在宅介護の時よりも心にゆとりが持て、家族の関係も良好になり笑顔が見られるようになったという嬉しい声を聞くことができました。。

1人で抱え込まず、介護のプロに頼ることも大事

施設には介護のプロフェッショナルが揃っています。 無理に入居をすすめることはしないので、困ったことがあった時は気軽な気持ちで相談してほしいと考えています。 1人でも多くの方が笑顔で介護と向き合い、家族で幸せになること。これを切に願いながら、私たちはサービスを提供しています。